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だんまりくらべ
再話:たまの まさと |
昔、あるところに爺と婆とあった。 あるとき、爺と婆は隣から牡丹餅を七つもらった。 さっそく爺が一つ食べると、婆も一つ取って食べた。 また爺が一つ食べると、婆も一つ食べた。 その次また爺が一つ食べると、婆も一つ食べた。 牡丹餅は一つだけになった。 爺は、牡丹餅を取ろうと手を伸ばしたが、途中で引っ込めた。 婆もやっぱり、伸ばしかけた手を引っ込めた。 婆が言った。 「お爺さん、だんまりくらべをしようじゃありませんか」 「勝った方が、この牡丹餅を食べるのだね」 「そうですよ」 婆が、こっくりと肯いた。 だんまりくらべが始まった。 夜になった。 爺はすることもないので、布団に入った。 続いて婆も布団に入った。 そして、黙ったまま、二人とも牡丹餅とにらめっこしていた。 夜が更けるころ、この家に泥棒が押し入った。 泥棒は米やら茶碗やら盗み出すと、風呂敷に包んだ。 それから、よっこらしょと背負い、歩き始めたところで牡丹餅を見つけ、手を伸ばした。 その途端、我慢できなくなった婆が、ありったけの声で叫んだ。 「ど、どろぼぉぉっ!」 いきなり大声を出された泥棒は、風呂敷包みを投げ出して、逃げていった。 「お婆さん、私の勝ちだよ」 そう言って、お爺さんは美味そうに牡丹餅を頬ばった。 お仕舞い。 (C) 2010 by Adzki inc. このページのコピー、印刷、送信、転載など著作権に触れるおそれのある行為を禁じます。 |