ドッドさんの絵本

言葉をしゃべらなくても人間くさい動物たち

(2009年11月〜  )



はじめに
 もうすぐまた師走がやって来る。日本では厳しい冬の季節を迎えるが、南半球にあるニュージーランドはこれからが夏本番である。茶目っ気たっぷりの愉快な犬6匹が繰り広げる楽しい絵本の作者ドッドさんはここで生まれ、今も北島のタウランガに暮らしている。小さい頃から絵を描くのが大好きで美術学校に学び、クイーンマーガレット・カレッジで美術の先生をしていた。そんな彼女が絵本の制作を手がけるようになったのは、猫の絵本に入れる挿絵を頼まれたことがきっかけだった。

マクレリーの誕生
 掲載したのは1983年に発表した第1作目 Hairy Maclary from Donaldson's Dairy (1983) のお話の「転」にあたる箇所の挿絵(一部分)である。この場面は登場人物(?)となる6匹が勢揃いし意気揚々とお散歩を続けるうちに、とうとう町外れまで来てしまったという箇所にあたる。どの挿絵にもドッドさんらしい細やかな仕掛けがあって幼い子どもでも十分楽しめるようになっている。しかもこのページには少し大きな子どものために次の場面を予測させるようなちょっとワクワクする工夫も施されていて、読んでもらうとき子ども達が息を潜めて見守る箇所でもある。(残念ながらそれらの工夫や仕掛けは掲載した部分の枠外にある)  この作品はいきなり大ヒットし、ドッドさんは大学を辞めて絵本の制作に専念することになった。といっても次から次へと描きまくる流行作家ではなく常に丹念な仕事を心がけ、発表は律儀に一年一作を守っている。そしてどの作品も永く英語圏の子ども達に読み継がれるロングセラー絵本となった。主人公はマクレリー、画面の右端にお尻だけ見える小さな黒い犬の名前である。

人間くさい動物たち
 ドッドさんの絵本に登場する動物たちはジャケットを着ていないし、ズボンも靴も履いていない。言葉をしゃべらないし、人間のように二足歩行することもない。みな普通の動物と同じように四つ足で動き回っている。しかし動物たちには表情があり、意思の疎通があり、絵本にはストーリーがある。  不思議だが、ちゃんと物語になっていて、次はどうなるだろうと読者をワクワクさせたり、ハラハラ・ドキドキさせてくれる。これが動物の絵本といえば擬人化が当たり前の日本の絵本とは一番に違う点である。擬人化しなくても、ドッドさんは擬人化した以上に人間くさい動物たちを登場させることに成功している。  マクレリーは、そんな犬たちのお話の主人公である。もしゃもしゃした黒い毛で全身がおおわれた小型犬で、種類はテリアと説明されている。もちろん飼い犬だから首輪をしているし、首輪には赤い札も付いている。おちびさんだが、これがどうしてなかなかの人気者である。仲間内でも、町の人にも何かと気になる存在なのだろう。毎回あちこちで小さな騒動を巻き起こして読者を楽しませてくれる。

子どもの絵本と擬人化
(執筆中)


(c)2010 Adzki, Inc  このページのコピー、印刷、送信、転載など著作権に触れるおそれのある行為を禁じます。リンクをはる場合は事前にメールで許諾を得てください。  2010年03月29日更新